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【書評】小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争 – 弁護士鶴間洋平の「新時代のプロフェッションを目指して」
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【書評】小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争


先日のエントリで紹介しました法制審議会で新時代の刑事司法制度特別部会の幹事をされている神洋明先生が、会食の席で「すごい面白かった」と話をされていた本を、ようやく読みました。 文句なく面白い本です。私は別に多読でもないし、書評なんて得意でもないですが、すごく面白かったので感じたことを以下に数点。そうそう、中身は「小沢一郎vs特捜検察」という書名のとおりですので、特に説明は要りませんね。

  1.  まず、著者がそれぞれの出来事について様々な角度から描いてくれていること。このあたりは大新聞社の編集委員、さすがプロ。近年、小沢ネタや特捜検察の構造的な問題点については、様々な人が本を書いている。特に、この問題と非常に近い立ち位置にいた政治家や有名ヤメ検も本を書いているが、バイアスのかかった視点から一本調子で書かれた浅くて平板なものが多く、最後まで読まずに放り出してしまった本が何冊かある。例えて言えば、ジョージアの缶を真横からだけ見て「ほら、どう見ても四角でしょう」と言っているようなもの。しかし、本書は違う。とても「立体的」だ。一方で、ステレオタイプに物事を捉えたがる人には、ひょっとすると食い足りないかもしれない。
  2.  次に感じたのが、情報量の多さ。本書に書かれている様々な出来事が、いわゆる「行間」にある多くの前提情報とあわせて頭に入ってくるので、文字数以上に情報量を感じる。そもそも私は弁護士であり、特に本書に何度も名前が出る検事らがまさに担当していた東京地検特捜部が相手の事件の弁護団を務めていたこともあるので、余計にそう感じるのかもしれない。一方で、政治について書かれた場面については、私は行間を読む前提となるべき知識が恐らく足りていない。政局に関する歴史的事実をもっと知っていれば、感じるものがだいぶ違うのではないかと思う。
  3. 3点目にあげるのは、著者はこれだけの本を書くだけの知識・経験と表現力を持っているのに、ある部分については非常に切れ味が悪くなっていること。「書くことがない」ために切れ味が悪いというのではないだろう。本書に限ったことではなく、人が書いたものを読むときは、書き手の社会内での立ち位置を見極め、その立ち位置によって表現に制限がかかりうることを前提に読まないと、全体像を見誤る。そういう危うさをはっきり感じさせる本だと思う。「はて何のことだろう?」と思う人は、いい人すぎるかもしれませんよ。

一般市民の方が読んでも面白いでしょうけれど、法曹関係者は読んでおかなければいけない本かもしれません。オススメです。

それでは~