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新時代の刑事司法制度 – 弁護士鶴間洋平の「新時代のプロフェッションを目指して」
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新時代の刑事司法制度

昨日は、第一東京弁護士会新進会の例会に幹事長として参加。

今年度は、時々、例会に第一線で活躍されているベテラン弁護士の先生を講師にお招きして、トピカルな話題について30分程度のプチ勉強会を開催しています。今回は、法制審議会で、新時代の刑事司法制度特別部会の幹事をされている神洋明先生をお招きして、同部会のここ1年間の動きを講演して頂きました。ちなみに神洋明先生は、昭和61年度の新進会幹事長を務められた大先輩でもあります。

前田元検事による証拠偽造事件をきっかけに法務大臣が法制審議会に諮問して発足した同部会ですが、「全面可視化」とか「全面証拠開示」といった大雑把な議論ではなく、現実に制度を変えることを前提とした詳細な議論が既に1年以上もなされているとは、不勉強にも知りませんでした。

一番の問題であろう取調の可視化は、対象とすべき取調・事件・人の範囲について激しく綱引きがなされており、証拠開示については証拠自体の全面開示ではなく、「証拠のリスト」の開示の線で攻防がなされているとのこと。それら以外にも、約70ものテーマについて議論がなされているそうでした。

また、前田元検事の事件の後も捜査側に問題ある事案が続きましたが、特に最近明らかになった「遠隔操作によるなりすまし脅迫メール」の件では、4人が逮捕され、犯人でないのに自白をした人が2人もいたということが大問題になっているとのことでした。

人は弱みに付け込まれると、調書の中身なんてどうでもよくなって判子を押してしまいます。捜査機関がそうして証拠を揃えて行く技術は、驚くほど発達しています。そもそもは、真実に迫るために技術を発達させたのでしょうが、その技術が発達しすぎて、真実でなくとも真実っぽく見せられるところまでいってしまいました。「犯人でないのに自白した人」というのは、「なりすまし脅迫メールの2人」だけでないことは明らかでしょう。取調官個人の問題ではなく、構造的な問題です。

それでは裁判所はどうかというと、裁判所は真実を見抜いてはくれません。菅家さん、ゴビンダさんの件でも明らかなように、最高裁でも真実を見抜いてはくれません。事実認定の場面では、証拠の優劣を判断するだけです。そもそも裁判官は神様ではないので、それが限界です。しかし、捜査機関が、真実と離れた証拠にも相当の重み付けをできるようになってしまったのですから、そういう証拠の重みについて疑いの目を持たなければならないはずですが、まだまだ裁判所はそういう前提で判断を始めているようには見えません。

刑事司法制度に対する国民の信頼を回復させるために、早急な対応が必要であるとともに、過去の事案にも疑問の目を向ける必要があるでしょう。問題案件が昨日今日急に増えたのではないはずですから。