昨日は、原子力損害賠償支援機構の「専門家チームによる巡回相談」で葛尾村の方々が避難している三春町貝山多目的運動広場仮設住宅へ。郡山まで新幹線、そこから機構チャーターのタクシーで20分ほどの山の中。
地元の行政書士の先生と二人一組で、被害者の方の個別相談にあたる。「訪問先が仮設住宅等であることを踏まえ、被害者の方々に配慮した服装として下さい」との要望があるため、ポロシャツとチノパンで向かう。
田舎のおじいちゃんおばあちゃんは、自分から法律相談に来ることは期待できない。そこで、一週間ほど前に、機構の職員の方が、仮設住宅を一戸一戸まわって「来週弁護士の先生さ来るんだげども、何かわがんねーごと、ないかぃ?」と予約を取ってくる。
最近、東電から「避難指示区域の見直しに伴う賠償の実施について(避難指示区域内)」とのプレスリリースがなされ、被害者さんに「住宅等の補修・清掃費用に係る賠償金ご請求のご案内」が郵送さ
れているタイミングであり、結構な予約が入っているかと思いきや、予約は5枠のうち3枠のみ。しかし、内容はやはりいずれも不動産に関する賠償の問題。
必要な情報をチェックしておけば、相談に応じるのにそう難しい問題はない。被害者支援にあたっている弁護士からすると、政府・東電の姿勢には「もうちょっと何とかならないの?」というところが多いが、どこに行っても「東電に対する直接請求では納得できないでしょうからADRしましょう訴訟しましょう」という対応でいいわけではない。特にここにいるのは、穏やかな田舎暮らしをしていた人たちで、そして、穏やかな田舎暮らしに戻りたがっている。
現時点でこういう現場に派遣された専門家としての主な役割は、間違った噂レベルの情報を取り消すこと、後にやはり納得いかないと思ったときの救済の余地を残してあげること、そうしてできるだけ穏やかな気持ちを取り戻してもらうこと。請求のための手続の選択肢なんて何度もあちこちで説明を受けているし、直接請求する人はとっくに請求してお金を貰っている。「はいはい、それは法律上これこれですからもっと請求できるはずですよADRか訴訟すれば」などと説明してあげてもほとんど意味がない。
しかし、派遣された弁護士には、15分ほどで相談を打ち切って苦情が出た弁護士もいるようだ。確かに、事案を聞いて結論を出すだけであれば、15分もかからないだろうが、そういう役割を求められているのではないことはわかるはずだ。ひょっとすると「公益活動をやっている」という意識が全然ないのかもしれない。それなりの報酬が出るので、日当目当てで参加している弁護士もいるようだ。それとも「業務」と割り切っているのかもしれない。
これから、弁護士業界もますます競争が激化する。司法試験合格者を3000人にしようが2000人にしようが1500人にしようが、状況はあまり変わらない。これから20年くらいは、自然減は500人くらいだろうから、ドロップアウトする人が「ものすごく多い」か「すごく多い」か程度の差しかないだろう。そういう時代に、単に金を稼ぐための「業務」になってしまった場合、こういう公益活動は苦情の嵐になってしまわないだろうか・・・。
(facebookの記事を翻案)