審査委員から見た、法テラスと一般社会とのかかわり


審査委員から見た、法テラスと一般社会とのかかわり – 弁護士鶴間洋平の「新時代のプロフェッションを目指して」格安で弁護士を使う方法 : 弁護士業界 裏の隅
格安で,弁護士を使う方法がある。 法テラスだ。 以前もちょっと書いたが,利用者の立場で再論しよう。 …
法テラスに対する、ある地方の中堅弁護士の見方です

※2013/2/15に閉鎖されたようです。示唆に富んだサイトでしたが残念です。

同業者である弁護士のブログを見ていると、最近、法テラスのあり方に関する記事をよく目にします。上のブログは、最近私が更新を楽しみにしている、地方都市の中堅弁護士と称する匿名の人物のブログです。書いてある中身からして、ブログ主が中堅弁護士であることは、ほぼ間違いないでしょう(地方都市の弁護士かどうかはわかりません)。

上記の記事は、利用者から見た法テラスについての記事ですが、なかなか面白い視点で書かれています。こういう見方をする弁護士がいるということを、一般市民の方も知っておく必要があるかもしれません(ちなみに、私もブログ主の見解に全面的に賛成というわけではありませんので悪しからず)。

ところで、私ですが、法テラスの扶助の審査委員をそれなりに長い期間担当しています。一般の方に知っておいて欲しいのは、上記のブログのように、扶助制度が報酬との関係で大きな問題があるということだけではなく、審査委員がどのような基準で扶助の決定を出しているのか、に関することです。

法テラスは、民事法律扶助の制度について「裁判をやれば確実に救済してもらえるのにお金がないから裁判をできずに権利を実現できない市民」に対して扶助の決定を出すわけではありません。

何が違うかというと、私が一番違うと思うところは、我々審査委員は、「勝訴の見込みがないわけではないこと」という、かなりハードルが低い基準で扶助の決定を出すというところです。

実際問題として、「これはちょっと厳しいんじゃないの?」と思うような事案に対しても、絶対無理と確信できない以上は、他の要件を満たすのであれば扶助の決定を出します。それも、上記ブログ主が指摘するように費用は相当の安値になりますし、利用者の多くも、月額5000円ないし1万円という生活を圧迫しない程度の経済的負担で済みます。

するとどういうことが起きるのか。審査委員は、扶助事件の報酬決定にも関与しますが、その中には、極めて不利な、要するに敗訴的な和解をした事件もそれなりに含まれています。また、数は少ないですが、敗訴したので控訴したいとする扶助申請にもそれなりに当たります。ああいう低いハードルで扶助決定を出しますから、モロに敗訴して控訴も断念したという事件もかなりの件数があるはずですが、それは機械的に事務処理されるだけですので、我々審査委員の目には入ることはありません。

要するに、これまでは弁護士が、費用対効果や結果の見込みの点からあきらめさせていたような事件が、法テラスの手によって裁判所に持ち込まれているのです。法テラスは、市民の弁護士へのアクセスをかなり容易にさせたはずですが、そのことにより、応訴の負担を負わざるを得ない人たちをも数多く生み出し始めているのです。

これからも、法テラスの役割は大きくなり、民事法律扶助の制度は拡充されていくでしょう。経済的に苦しくなった弁護士たちは、どんどん法テラスに群がるでしょう。それは、社会の隅々に法の光をあてるという側面だけでなく、弁護士から攻撃される市民が増えるという側面もあることを理解しておく必要があります。そうすると、常日頃からそういう事態への備えをしておくべき、ということになるでしょう。弁護士の品質に相当のばらつきが出る時代ですから、優秀な弁護士へのアクセスを確保しようとすると、日常からそれなりのリーガルコストが必要になるでしょう。

これも、司法制度改革の一つの側面なのです。